「毎朝、起きるのがつらい」、「朝、すっきり目覚めたい。良い方法はありますか?」と、お声を頂戴します。毎朝、シャキッと目覚めて、元気に一日を過ごせたら気分がいいですよね。夜の光の浴び方が、目覚めに影響があるとされています。ここでは、すっきりと目覚めるための、光や照明の浴び方をお伝えします。しくみを知ることで、睡眠の心配ごとが一つでも少なくなり、快眠にお役立ていただければ幸いです。
目次
光を浴びる時間帯で変わる、目覚めのタイミング
睡眠を知ろうとすると、ヒトのしくみの神秘さに魅了されます。今回お伝えする、光と眠りと目覚めの関係も、シンプルですが、不思議さに包まれています。
眠っている間の、光を浴びるタイミングで、目覚め方が遅くなったり、早くなったりするというのです。
具体的には、
- 眠りに向かう、体温が低下するときに、光を浴びると、目覚めが遅くなる
- 目覚め(覚醒)に向かう、体温が上昇するときに、光を浴びると、目覚めが早くなる
という、関係性です。
実際には、目覚めが早くなったり遅くなったりするだけでなく、ヒトの一日のリズムが、早まったり、遅くなったりします(宮崎、林、2017)。
上記の1、の場合、体温の低下時に光を浴びると、朝の目覚めが遅くなり、リズムがずれこむため、夜、眠りに就く時間も遅くなります。結果、夜型になりやすくなります。
2、の場合、体温の上昇時に光を浴びると、目覚めが早くなり、そのリズムのまま、夜、眠りに入るタイミングも早まり、朝型になりやすくなります。
光の浴び方を調整することで、早寝早起きになったり、宵っ張りになったりするというのです。これを知ると、とても、気持ちが楽になりませんか?
今は、タイマーや調光機能がついた照明機器が販売されています。照明器具の工夫で、簡単に寝室での光の浴び方を調整できます。
では、具体的な、光を浴びる時間帯はどうなのでしょう。
具体的な時間帯を、医学博士出睡眠の専門家の堀忠雄氏は、著書の中で下記のように伝えています。
体温が低下する22時以降から最低体温付近までの早朝3時~5時頃にかけて明るい光にさらされると、生体リズムに遅れが生じる。中略 逆に、体温が上昇し始める頃から午前10時頃に明るい光にさらされると、生体リズムが早まる。
(堀、2008)
上記は、標準的な眠り方をする場合の、具体的な時間帯です。
それぞれの人によって、就寝起床時刻は異なります。その場合は、就寝約1時間前から最低体温になるまで、と、最低体温の後の約5時間の二つの時間帯にわけることもできます(堀、白川、2008)。ご自身の、就寝時刻、起床時刻に合わせて、時間帯をみはからってみてください。
朝の光が、目覚めのすっきり感に影響
ここからは、朝、起きる30分前から浴びる光が、目覚めのすっきり感に影響する、ということをお伝えします。
前出の堀氏は、文献で次のように伝えています。
起床30分前から光を漸増すると熟睡感が向上し、起床時の眠気も低下する。
(堀、2008)
また、他の著書の中では、
起床30分前からの寝室内の照度を漸増していくと、よりすっきりとした目覚めがえられることも報告されている。
(堀、白川、2008)
とも伝えています。
つまり、起きる30分前から、強い光の照明を浴びるようにセットしておくと、眠りの満足度も上がり、すっきりとした目覚めも迎えられるというのです。
光の浴び方は、起きる時間に影響するばかりだけでなく、起床の30分前の光の浴び方で、眠気が残らず、すっきりと目覚められるのです。ヒトのしくみがそうなっているのです。
すっきり目覚めるための、工夫
ここまでは、光と睡眠、目覚めの関係をお伝えしてきました。ここからは、すっきり目覚めるためにできることをお伝えします。起床時と夜間の照明の工夫です。
起床時
起床時の照明の工夫です。
目覚ましライトなど、タイマーで強い光の照明が点灯するしくみの、照明器具を用意する
最近は、光で目覚めるための、目覚ましライト、光目覚まし時計などが、販売されています。光の強さを調整できる商品もあります。光の強さは、2,500ルクス以上の明るい光が好ましいとされています(堀、白川、2008)。それぞれの商品の、光の強さや、タイマー機能、調光機能などを比べながら、納得する商品を選んで、使ってみましょう。
朝日で目覚めるのが理想ですが、現代社会では、遮光カーテンや雨戸シャッターの利用、天候の不順、生活の時間帯の違いなどから、朝日で目覚めるのは、非現実的です。積極的に、照明器具を使うのが、現実的です。
就寝前
就寝前、夜できる照明の工夫です。
就寝前1時間は、やや暗く暖色の間接照明やスタンドの照明にする
これまでお伝えしたように、眠る前の1時間前から数時間に浴びる光は、朝の目覚めの時間に影響があります。眠る前の、リビングや寝室でのくつろぎの時間帯の、照明を暗めにするようにしましょう。
具体的な明かりの数値は、100ルクス以下であれば、朝の目覚めの時間帯を遅らせることはない、とされています(宮崎、林、2017)。夜、室内の明るさは、200ルクス程度とされています。リビングでのくつろぎの時間に、100ルクスの照明は、現実的ではないかもしれません。
でも、欧米のリビングの照明は、間接照明だけで、相当な暗さです。リラックスしながら、心地よい眠りに入りやすくするには、慣れてしまうと、それが普通と感じることもできるかもしれません。ご家族と相談しながら、照明をかえてみるのも良い機会になるかもしれません。
パソコン、スマートフォンの光が影響することを考慮する
夜、パソコンやスマートフォンを使用することは、睡眠の質に影響を与える、と、多くの方が耳にしていることでしょう。理由は、パソコンやスマートフォンの光が、青色光という波長のタイプの光だからです。
つい、スマートフォンを夜遅くまで利用する方も、少なくはないでしょう。朝の目覚めを気にする方は、影響があることを承知して、控えるようにするのが得策です。
就寝中
睡眠中の寝室の照明は、好みもあり、暗くしたい方、少し明かりをつけたい方もいらっしゃるでしょう。ぐっすり眠るための照明の工夫は、「ぐっすり眠るための、就寝中の照明の選び方」 をご参考になさってください。
メラトニンの影響
ここまでお伝えしてきた、光の浴びるタイミングによる、朝の目覚めの影響は、メラトニンというホルモンが影響しています。
この記事では、睡眠のしくみを、シンプルに、わかりやすく、お伝えすることで、睡眠の不安をなくし、リラックスして、心地よく眠っていただくことを目的にしています。そのために、メラトニンという言葉を使わずに、お伝えしてきました。
ただ、最後に、しくみの実態を、正しくお伝えするために、メラトニンについて、少し記載しておくことにします。
最初に、
- 眠りに向かう、体温が低下するとき、光を浴びると、目覚めが遅くなる
- 目覚め(覚醒)向かう、体温が上昇するときに、光を浴びると、目覚めが早くなる
とお伝えしました。
これは、詳細には、次のように書きかえることができます。
- 眠りに向かう、体温が低下するとき、光を浴びると、メラトニンの分泌が抑制され、睡眠のリズムが遅くずれ込むために、目覚めが遅くなる
- 目覚め(覚醒)向かう、体温が上昇するときに、光を浴びると、メラトニンの分泌時刻が早まり、目覚め早くなる
この記事で、光を浴びることに焦点を当ててきましたが、光を浴びることで、メラトニンの分泌が影響される、というのが実際のところになります。最後に、メラトニンの説明です。
メラトニンとは、眠りに向かう一時間程度前から分泌され、最低体温の1~2時間前がピーク、その後、減少する、夜間にだけ分泌されるホルモンです。分泌が増加すると、体温が低下し、眠りの状態になります。ただ、夜間でも、光を浴びると、メラトニンは、分泌が抑制され、体温が上昇し、覚醒状態になり、眠りの生体リズムの時間が、遅くずれ込むのです(堀、2007)。
以上です。
光と睡眠のしくみを知ることで、目覚めの不安が減って、リラックスして安眠し、元気な一日を過ごしていただければ幸いです。
脚注
文献
堀忠雄、(2008)『睡眠心理学』株式会社北大路書房.
堀忠雄、白川修一郎、(2008)『基礎講座 睡眠改善学』一般財団法人日本睡眠改善協議会.
井上昌次郎、(2014)『ヒトはなぜ眠るのか』講談社.
宮崎総一郎、林光緒、(2017) 『睡眠と健康』一般財団法人放送大学養育振興会.
ご参考になれば幸いでございます。寝具の疑問、ご不明な点は、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。今晩も、どうぞぐっすりとお休みいただけますように。
この記事を書いた人
シーツjp店長。上級睡眠健康指導士(認定登録番号 第662号)。
専門分野の、快眠のための寝具の販売、及び、ご相談、ホームファニシング、インテリア販売に、1994年から従事。1923年創業の弊社の店舗にて、対面で23年間、お客さまにぐっすり眠れるための寝具のコンサルティング、ご提案、販売を担当。その経験を活かし、現在は、オンラインにて気持ちよく眠っていただくための、ベッド用寝具の販売、ご提案、ご相談に注力。
前職は、米国の航空会社のマーケティング部アジア統括スーパーバイザー。お客さまが快適で安全な空の旅を楽しんでいただくための仕事に従事。
たずさわるすべての方々とそのご家族が、ぐっすりと気持ち良く眠り、心地良く目覚め、活力いっぱいに、毎日をお幸せにお過ごしいただけるよう、仕事をしています。
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