「お風呂にゆっくりつかると、朝までぐっすり」「お風呂に入ったら、目が冴えてしまった」、ご経験、ありませんか? 入浴と睡眠には、興味深い関係性があります。ここでは、睡眠の質を高め、ぐっすりと眠るために効果的な、あなたの生活スタイルや入浴の好みに合わせた、入浴の方法をお伝えします。毎日の暮らしに、お役立ていただけますれば幸いです。
目次
睡眠の質を高めるために効果的な入浴の方法
「お風呂につかり、あったまると、ぐっすり眠れる」と、体感していらっしゃる方は、多いことでしょう。一方、「お風呂に入ったら目が冴えてしまった」という方もいらっしゃるかもしれません。
この違いは、お風呂のお湯の温度と、入浴するタイミングが、引き起こしている現象です。
ここでは、ぐっすりと眠り、質の良い睡眠に効果的な入浴方法をお伝えします。あなたの入浴の好みや、生活パターンに合わせて、ベストな方法をお試しください。
ぐっすりと質の良い睡眠に効果的な入浴の方法
1.ぬるめのお湯につかるのがお好みの方
- 就寝の15~30分程度前に、約40℃のお湯に、15~20分程度あたたまる(宮崎、林、2017)。
2.熱めのお湯につかるのがお好みの方
- 就寝の1~2時間程度前に、約42℃程度のお湯にあたたまる(宮崎、林、2017)。
3.お湯につかるのが好みでない、お湯につかることができない方
- 40~42℃のお湯に、10~20分程度の足湯をする。
- 足湯のタイミングは、基本的には、就寝前。お湯の温度とつかる長さによって、就寝の1時間前程度前にしてもよい(吉永、吉本、2005)
4.お湯の温度にこだわらないが、入浴時間は変えたくない方
入浴時間の調整が難しい方は、お風呂のお湯の温度を変えます。
- 睡眠直前の入浴が都合のよい方は、お風呂のお湯の温度を、ぬるめの40℃程度にしてつかる
- 睡眠の1~2時間前に入浴するのが都合のよい方は、お風呂のお湯を、熱めの、42℃程度につかる
5.お湯の温度、入浴時間にこだわらないが、質の良い睡眠で眠りたいという方
- 就寝の15~30分程度前に、約40℃のお湯に、15~20分程度あたたまる。
睡眠の質を高めることを、最優先にしたい方は、ぬるめのお湯にゆっくりとつかるのがおすすめです。
ぬるめのお湯につかることで、入浴による体への負担が少なくすみます。具体的には、入浴に伴う血圧の乱高下による脳血管障害や心筋虚血を防止になります(堀、2008)。
また、熱めのお湯につかると、交感神経が活発になり、眠りにつきにくくなりますが、ぬるめのお湯ならそれを防げます(井上、2010)。
ぬるめのお湯に、就寝直前にあたたまるのが、入浴の睡眠促進効果を一番期待できるのです。
ぐっすりと眠るために効果的な入浴の方法は、上記にご紹介した、5つのパターンがあります。ご自分の生活スタイルや、好みに合わせて、無理のない程度に、調整してみましょう。
睡眠は大切ですが、質の良い睡眠をとるために、生活スタイルや好みを無理に変更して、ストレスとなったら、本末転倒です。睡眠で一番大切なのは、心身共に、リラックスすることです。無理することなく、できる工夫をして、ご自身の睡眠を楽しんでみてください。
夏や気温の高い時期の入浴
夏は、夜、体温の低下がスムーズに行われないことがあります。気温が高いためです。入浴することで、夏は、体温が、さらに下がりにくくなることがあります。
その場合は、入浴後から就寝までの時間を少し、多く取ってみるのもよいでしょう。また、寝室のエアコンを上手に使い、体温をスムーズに低下させる工夫も大切です。
適切な入浴が、睡眠に与える効果
ここからは、適切な入浴によって、睡眠にどのような効果があるのかをお伝えします。主な効果は次の通りです。
- 寝つきが良くなる
- 入眠してから、最初の深い睡眠の時間が長くなる
- お湯につかることで、心身の緊張をほぐし、リラックスすることで眠気が増す
- 入浴で体があたたまることで、血液循環が促進され、発汗し、放熱がスムーズに行われる
(井上、2010)
上記の三つ、1番,3番,4番は、眠りに入りやすくなる効果、残りの一つ、2番、は、深い睡眠で眠っている時間が増えるという効果です。
すぐに眠れること、と、深い睡眠ができることは、睡眠の質にに大きく関係します。
睡眠の質を高めたい方は、お風呂のお湯の設定温度、入浴のタイミングを、調整してみましょう。
適切な入浴が、睡眠の質を高める理由
最後に、適切な入浴が、睡眠の質を高める理由をお伝えします。
入浴が、睡眠に影響を与える理由は、ヒトの睡眠が、体温の下降と上昇に深い関係性があることによります。具体的には、就寝前の入浴が、ヒトの入眠を促す、体温の下降の速度を速めるからです(堀、2008)。
医学博士で、睡眠の専門家である、堀忠雄氏は、著書の中で、次のように伝えています。
身体加熱によって、体温の最高値をさらに0.5~1℃高めると、生体リズムに対応した体温変動の振幅を一過的に大きくさせ、体温が上昇したぶんだけ体温低下の速度は上がる。その結果、入眠が促され、睡眠初期にまとまった余波睡眠が現れる
(堀、2008)
上記の、余波睡眠とは、一番深い睡眠のことです。
上記を、要約すると、就寝前の入浴によって、体温が高まり、その後の、体温の低下の速度を速め、そのことで、眠りに入りやすくなり、最初に訪れる深い睡眠の時間が一定時間発生する、と伝えているのです。
もう少し詳しく、ヒトの体温、睡眠、入浴による体温変化の関係性を見ながら、順を追って、説明します。
1.ヒトの体温変化と睡眠の関係
ヒトは、夜に、体温が最高値になり、その後、体温が低下するとともに、入眠し、体温が最低値になった後、上昇しながら、起床するしくみになっています(堀、2008)。体温の低下と、上昇が、スムーズに行われると、睡眠も円滑に進みます。
2.入浴と体温の関係
お風呂につかると、体があたたまり、その後、時間と共に、体温は低下します。お風呂につかることで、体温は、0.5~1℃上昇します(堀、2008)。
3.睡眠前の入浴が、体温の低下に与える影響
就寝前に、お風呂につかり、体温を、通常より、0.5~1℃高めることで、その後の体温の低下の速度が速まります。
4.体温の低下と、寝つきの関係
体温の低下の速度が速まることで、寝つきが早くなり、最初の深い睡眠の長さが長くなる、という流れです。
面白いですよね。自分たちの体感で、分かっていることが、科学的な根拠によって説明がされています。
ぐっすりと眠るために効果的な、入浴方法は、最初にお伝えした、5つのパターンからお選びいただけます。あなたの好みや生活パターンに合わせて、入浴方法を少し工夫することで、毎日の快眠にお役立ていただければ幸いです。
脚注
文献
堀忠雄、(2008)『睡眠心理学』株式会社北大路書房.
堀忠雄、白川修一郎、(2008)『基礎講座 睡眠改善学』一般財団法人日本睡眠改善協議会.
井上昌次郎、(2010)『眠る秘訣』朝日新聞出版.
井上昌次郎、(2014)『ヒトはなぜ眠るのか』講談社.
宮崎総一郎、林光緒、(2017) 『睡眠と健康』一般財団法人放送大学養育振興会.
吉永亜子、吉本照子、睡眠を促す援助としての 足浴についての文献検討、日本看護技術学会誌 Vol. 4,No. 2, pp 4─ 13, 2005.
ご参考になれば幸いでございます。寝具の疑問、ご不明な点は、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。今晩も、どうぞぐっすりとお休みいただけますように。
この記事を書いた人
シーツjp店長。上級睡眠健康指導士(認定登録番号 第662号)。
専門分野の、快眠のための寝具の販売、及び、ご相談、ホームファニシング、インテリア販売に、1994年から従事。1923年創業の弊社の店舗にて、対面で23年間、お客さまにぐっすり眠れるための寝具のコンサルティング、ご提案、販売を担当。その経験を活かし、現在は、オンラインにて気持ちよく眠っていただくための、ベッド用寝具の販売、ご提案、ご相談に注力。
前職は、米国の航空会社のマーケティング部アジア統括スーパーバイザー。お客さまが快適で安全な空の旅を楽しんでいただくための仕事に従事。
たずさわるすべての方々とそのご家族が、ぐっすりと気持ち良く眠り、心地良く目覚め、活力いっぱいに、毎日をお幸せにお過ごしいただけるよう、仕事をしています。
ぐっすり気持ちよく眠るための寝具のご相談は、お気軽にお寄せください。