「ベッドのマットレスは、硬めを選んだほうが良いですか?」と、お問い合わせを頂戴します。マットレスは、硬めを選べば安心、と思われている方も多いようです。ここでは、マットレスの硬さの選び方と、マットレスの硬さ選びの重要性をお伝えします。
目次
マットレスの硬さに期待すること
硬めのベッドマットレス、というと、どんなマットレスを想像なさいますか?
多くの方が、腰が沈まない、マットレス、を想像なさるのではないでしょうか。
朝起きたときに、背中や腰に違和感がなく、快適な目覚めを実感できるマットレス。それを実現してくれるのが、硬いマットレス、と表現している方が多いようです。
大切なことは、
- 腰が沈み込みすぎないマットレスの硬さを選ぶということ
- さらに、腰の沈み込み過ぎないマットレスの硬さは、寝る人の体形や体重によって異なる
という点です。
あなたにとってのベストな硬さのマットレスは、他の方にとっては、軟らかすぎたり、硬すぎたりして、寝にくいこともあるのです。
腰の沈み込み過ぎないマットレスで眠ると、腰や肩、首に負担をかけず、正しい寝姿勢で眠ることができるのです。
マットレスの硬さは、
- 正しい寝姿勢で眠るために選ぶ
と言っていいでしょう。
体が沈みこまない硬さのマットレスで眠るためには、むやみに反発力の高いハードタイプのマットレスを選ぶことではなく、
- あなたに合った、硬さのベッドマットレスを選ぶ
ということが重要なのです。
ベッドのマットレスの硬さの選び方
ここから、ベッドのマットレスの硬さの選び方をお伝えします。ベッドのマットレスの硬さは、次の項目を基に、あなたに合ったタイプを選ぶようにします。
- 体形・体重
- 眠る姿勢
- 好み
順番に、選び方をお伝えします。
体形・体重で選ぶ
どなたにも適応する、わかりやすい選び方が、体形や体重で、硬さを選ぶことです。マットレスの硬さを選ぶ際は、身長と体重の関係から算出される、BMI値を使うと、わかりやすく便利です。
あなたのBMI値からベッドのマットレスの硬さを選ぶ
あなたのBMI値が、
- 標準より低い場合(18.5未満)は、普通の硬さ~やわらかめ
- 標準の場合(18.5以上、25未満)は、普通の硬さ
- 標準より高い場合(25以上)は、硬め
のマットレスを選びます。(上記のBMI値の標準値は、Wikipediaを参照)
BMI値とは、ボディマス指数と呼ばれる、体格指数で、次の計算式から導きます。
- BMI値 = 体重(kg) ÷ 身長の2乗(m)
ご自身の身長と体重から、BMI値を計算し、硬さを選ぶ目安にしましょう。
体重とベッドマットレスの硬さの関係について、広島国際大学大学院とドリームベッド株式会社が行った実験と、その結果の論文があります。
論文では、ベッドに寝た時の、実際の沈み込みの量、体が沈み込んだと感じる評価数、と体重の関係性を、実験結果の図と共に次のように伝えています。
体重が40~60kg の人は、たわみ量が45 mm程度でも体が沈みこまない(青~緑のエリア)と感じているが、体重が重くなるにしたがって青や緑のエリアは左側に寄っていき、体が沈まないと感じるたわみ量が減っていっていることがわかる。
(濱崎,長町,石原.ほか、2010)
上記の、たわみ量とは、ベッドのマットレスの沈み込みの深さを表しています。
要約すると、体重40~60kg の人は、45mm程度、マットレスがへこんでも、体が沈み込んだと感じないが、体重が、60kg以上になると、30mm程度、マットレスがへこんだだけで、体が沈み込んでいる、と感じるというのです。
つまり、体重の重い人の方が、実際のマットレスが沈む(へこむ)量が少なくても、体が沈み込んでいると感じるやすい、という実験結果となったというのです。
さらに、次のような実験結果を伝えてくれています。
体重が50~60kgの人はたわみ量が40~50mm程度のマットレス、体重が60~80kgの人はたわみ量が35mm付近のマットレス、体重が100~110kgの人はたわみ量が25~30mmのマットレスが、体が沈みこまず寝返りのしやすい快適なマットレスであると感じることがわかった。
(濱崎,長町,石原.ほか、2010)
上記は、体重の重い方は、硬めのマットレスが、より適していることを証明しているといってい良いでしょう。
眠る姿勢で硬さを選ぶ
眠る姿勢、仰向きに眠るか、横向きに眠るか、でも、硬さの選び方が異なります。
- 仰向けで眠る方は、上でお伝えした、BMI値から硬さから選びます。
- 横向きで眠る方、横寝がお好みの方は、BMI値から選ぶ硬さよりも、やわらかめを選びます。
理由は、仰向けより、横寝の方が、体のカーブの凹凸が深いからです。横向きで横たわり、背骨が真っすぐな状態のまま眠るには、肩と腰の出っ張りが、きちんと沈み込む必要があります。
横寝が習慣の方は、普通からやわらかめのマットレスを選ぶのがおすすめです。
好みで硬さを選ぶ
ベッドのマットレスの硬さは、好みを重視することも大切です。睡眠の質や、寝心地は、それぞれの人の主観的評価にゆだねられていることが現状だからです。
先出の、体重とベッドマットレスの硬さの実験結果を、思い出してみてください。実際の沈み込みの量と、沈み込んでいると感じる感覚は、体重の軽い人と、重い人では感じ方が異なりました。感じ方は、好み、と通じる部分があります。
硬いのが好みであれば、好みを優先することも大切なのです。
下記、年齢・性別・体形による、好みの傾向をお伝えしておきます。
- 年齢:若い方は、硬めを好む傾向がある。年配の方は、やわらかめを好む傾向がある。
- 性別:男性は、硬めを好む傾向がある。女性は、やわらかめを好む傾向がある。
- 体形:がっちり体形の方は、硬めを好む傾向がある。華奢な方はやわらか眼を好む傾向がある。
この傾向は、BMI値を当てはめると、納得がいくのではないでしょうか。
マットレスの硬さ選びが重要な理由
最後に、マットレスの硬さ選びが、なぜ重要かをお伝えします。
重要な理由は、あなたに合った硬さのベッドマットレスの選ぶことで、
- 寝姿勢を正しく保てる
- 寝返りが必要な時に、寝返りがしやすい
- 体の一部に負担がかかることなく、体圧の分散が行われる
からです。上記は、睡眠の質に影響する要素です。
寝姿勢を正しく保つ重要性
正しい寝姿勢とは、ヒトが正しい姿勢で立つときと、同じ姿勢で眠れる状態です。具体的には、腰が沈み込んだり、突っ張ったりせず、S字カーブを保ち、眠れる状態です。
正しい寝姿勢で眠ると、体に負担がかからず、睡眠の質にも良い影響を与えます(堀、2000)。
医学博士で睡眠学の専門家の、堀忠雄氏は、著書の中で、正しい寝姿勢と睡眠の質について、次のように伝えています。
おしりの落ち込まないマットレスでは、はじめの一時間から一時間半はほとんど動いていない。余波睡眠でぐっすり眠っているのがわかる。中略 お尻の落ち込むマットレスでは、仰向けになると体がW字をえがくことになるのでつらい。したがって、仰向けは36分しかなく、左向きや右向きとくらべていちじるしく短い。自然に、無理な姿勢を避けているのが分かる。
(堀,2000)
上記の、余波睡眠とは、深い睡眠のノンレム睡眠の中でも一番深い眠りの状態のことです。
要約すると、正しい寝姿勢で眠れると、体に無理がかからず、体動が少なくなるので、深い睡眠を十分にとることができると伝えているのです。
ご自身に合った硬さで、腰の沈み込みがない、ベッドマットレスで眠ることで、正しい寝姿勢で眠れ、質の良い睡眠につながるというわけです。
寝返りが必要な時に、寝返りがしやすいことの重要性
寝姿勢が悪いことによる寝返りではなく、正しい寝姿勢でも、寝返りは発生します。医学博士で寝具と睡眠の専門家の、木暮貴政氏は、自身の論文で、寝返りの重要性と次のように伝えています。
寝返りには以下のような睡眠にとって重要な役割があり、寝返りしやすいことは非常に重要であると考えています。
寝返りの重要な役割
(A)睡眠段階を移行させるスイッチ
(B)血液の循環パターンの変化を促す
(C)体温・寝床内気候の調節
(木暮,2005)
マットレスの硬さは、寝返りのしやすさに影響します。硬すぎるマットレスは、寝返りするときに体に痛みを感じます。軟らかすぎるマットレスは、寝返りに無理な力が必要になります(木暮,西村,西村,白川,2007)。
あなたに合った硬さのマットレスを選ぶことで、寝返りが必要な時に、寝返りがしやすく、よい睡眠に影響するのです。
体の一部に負担がかかることなく、体圧の分散が行われることの重要性
腰が沈み込んでしまうマットレスは、腰にマットレスの圧力が、極端にかかります。腰に圧迫感があると、目覚めたときに、腰や背中に違和感が生じます。これが、体圧の分散がきちんとされていない状態です。
体圧分散がされることは、体に無理がかからずに眠れる要素の一つです。
先出の、広島国際大学大学院とドリームベッド株式会社との共同の実験結果の論文では、体の沈み込みの少ないマットレスは、体圧も分散されていると伝えています(濱崎,長町,石原.ほか、2010)。さらに、
体重が軽い人の場合は高めの高反発マットレスよりも中程度の高反発マットレスが良いと言える。
(濱崎,長町,石原.ほか、2010)
と伝えています。
体に合った硬さのマットレスを選ぶことで、体圧の分散が行われ、体に負担が少なく眠れると伝えてくれているのです。
以上
マットレスの硬さの選び方をお伝えしました。
まとめると、マットレスの硬さ選びの目安は、次になります。
- あなたのBMI値が、標準より低い場合(18.5未満)は、普通の硬さ~やわらかめ
- あなたのBMI値が、標準の場合(18.5以上、25未満)は、普通の硬さ
- あなたのBMI値が、標準より高い場合(25以上)は、硬め
- 仰向けで眠る方は、上記のBMI値で示された硬さ
- 横寝の方は、普通からやわらかめ
- ご自身の好みがある場合は、好みの硬さ
のマットレスを選ぶのが、目安です。
この記事では、ベッドのマットレスの硬さのしくみについては、述べていませんことをお断りしておきます。別の記事で、今後お伝えできればと計画しています。
この記事が、あなたに合った硬さのベッドマットレス選びに役立ち、快眠をお楽しみいただければ幸いです。
脚注
文献
濱崎景子,長町三生,石原茂和,瓜阪陽輔,岩村憲樹,浜村徳久:物理計測に基づく体形別最適ベッドマットレス―感性人間工学によるベッドマットレスの開発研究2―,日本人間工学会大会講演集,日本人間工学会第51回大会,セッションID: 2D1-O4,2010.
木暮貴政,西村泰昭,西村章,白川修一郎:入眠姿勢での寝心地が睡眠に及
ぼす影響,日本生理人類学会誌,Vol.12,No.4,171-176, 2007.
木暮貴政:寝具と睡眠,バイオメカニズム学会誌,Vol.29,No.4,2005.
堀忠雄、(2000)『快適睡眠のすすめ』岩波新書.
ご参考になれば幸いでございます。寝具の疑問、ご不明な点は、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。今晩も、どうぞぐっすりとお休みいただけますように。
この記事を書いた人
シーツjp店長。上級睡眠健康指導士(認定登録番号 第662号)。
専門分野の、快眠のための寝具の販売、及び、ご相談、ホームファニシング、インテリア販売に、1994年から従事。1923年創業の弊社の店舗にて、対面で23年間、お客さまにぐっすり眠れるための寝具のコンサルティング、ご提案、販売を担当。その経験を活かし、現在は、オンラインにて気持ちよく眠っていただくための、ベッド用寝具の販売、ご提案、ご相談に注力。
前職は、米国の航空会社のマーケティング部アジア統括スーパーバイザー。お客さまが快適で安全な空の旅を楽しんでいただくための仕事に従事。
たずさわるすべての方々とそのご家族が、ぐっすりと気持ち良く眠り、心地良く目覚め、活力いっぱいに、毎日をお幸せにお過ごしいただけるよう、仕事をしています。
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