体圧分散、という言葉、聞いたことありますか? マットレスの特徴説明で、「このマットレスは、体圧分散効果があるので、体に負担なく快眠できます」など、見たり、聞いたりする方もいらっしゃるかもしれません。確かに、体圧分散機能は、快眠寝具で大切な機能ですが、快眠のためには、その機能だけでは十分ではありません。ここでは、体圧分散とは?、と、マットレスの構造別の体圧分散のしくみ、体圧分散の機能以外に必要な機能をお伝えします。
目次
体圧分散とは?
寝具の説明で使われる、体圧分散とは、敷き寝具の上に横たわったときに、体の重い部分や出っ張った部分に、強くかかる圧力を分散させることで、快眠を促す機能のことです。体圧を分散させると、重く出っ張った腰などにかかる負担をやわらげ、体が楽な状態で睡眠をすることができます。
体圧分散の機能は、体に負担をかけずに、快眠するためには、重要であり、必要な機能です。ただ、体圧分散の機能だけでは、快眠寝具としては、不十分です。その理由を、次の項目でお伝えします。
体圧分散だけでは、快眠は促せない
本題に入る前に、まず、圧力が分散される、という状況について、お伝えさせてください。理科の授業で習った、圧力と力、力のかかる面積の関係性です。
ご存じの通り、力が同じでも、力のかかる面積が小さいと圧力は大きくなり、面積が大きいと圧力が小さくなる、という関係性です。
これを、ヒトがマットレスに眠るときの場面に置き換えると、体の圧力、つまり、体圧が、一番分散される状態は、体と寝具の表面のすべてに密着して、眠る状態ということになります。(接触面の摩擦がなく、体の曲線、重さを均等に受け止めると仮定した場合)
例えば、やわらかくて、たっぷりとわたの入った、厚みのある昔ながらの敷き布団や、やわらかなスプリングのマットレスに、眠ると、体は、寝具に密着します。体圧は、確かに分散されています。しかし、心地よく、質の良い睡眠が、とれるでしょうか? とれませんよね。
仮に、体の曲線や、重さの違いを均等に受け止める素材のマットレスがあったとしても、同じことです。体が寝具に密着している、というだけでは、快眠はできません。
ヒトは、睡眠中コップ1杯の汗をかきますので、密着していれば、そこに湿気がこもります。また、密着しながら、体重がかかっていますので、血流やリンパの流れが滞ってしまいます。
つまり、快眠のためには、体圧分散の機能だけでなく、湿気の調整、血流やリンパの流れの滞りがないような、対策をされた寝具が必要になるのです。
快眠マットレスを検討したり、選んだりするときには、体圧分散機能があるだけでは、選ばないことが大切です。極端な話、どんな寝具も、圧力の概念からすれば、体圧が、分散される機能はあるのですから。
では、体圧分散機能のほかに、どんな機能が必要なのでしょう。次の項目でお伝えしていきます。
マットレスの形状、構造別、快眠に必要な、体圧分散以外の機能
最近は、形状や構造の異なった、多くのマットレスや敷き布団の特徴説明で、体圧分散機能、体圧分散効果、などと表示されるようになってきています。例えば、低反発マットレス、高反発マットレス、凹凸形状のマットレスなどです。
ここでは、それぞれの構造のマットレスが、どのように体圧分散機能を発揮しているかと、快眠のためには、体圧分散機能以外に、どんな機能が必要なのか、をお伝えします。ご自身のお好みに合ったマットレス選びをする際に、お役立ていただけます。
最初に、快眠マットレスの構造の違いが、分かりやすいように、快眠マットレスの代表的な商品名を上げてご紹介し、そのあとに、それぞれの構造別の説明をお伝えします。
構造の違う、代表的な快眠マットレスの例
快眠マットレスの構造の違いをわかりやすくするために、快眠マットレスの代表的な商品名を上げておきます。いずれも優れた、快眠のための健康マットレスです。それぞれの公式ホームページのリンクも記載しましたので、構造や、体圧分散をはじめとした、機能の特徴も、どうぞご確認ください。
- 低反発マットレスの テンピュール (テンピュール公式ホームページのリンク )
- 高反発マットレスの エアウィーヴ(エアウィーヴ公式ホームページのリンク)
- 凹凸形状の ムアツふとん・ムアツスリープスパ(ムアツふとんの公式ホームページのリンク)
- 凹凸形状の 西川エアーマットレス (西川エアーの公式ホームページのリンク)
マットレスの構造別、体圧分散のしくみと、体圧分散以外に必要な機能
ここからは、マットレスの構造別に、体圧分散のしくみと、体圧分散以外に必要な機能をお伝えします。
それぞれの構造のマットレスは、最初にあげた代表的な商品のほかにも、様々な商品が販売されています。形状や構造が同じでも、使われている素材によって、機能性のレベルや、品質、耐久性、が、異なります。実際に、マットレスをお選びになる際は、商品の品質や価格なども吟味するようにしましょう。
低反発マットレス
体圧分散のしくみ
低反発マットレスの体圧分散のしくみは、体の曲線や重さに合わせて、体に密着しながらマットレスが沈みこみ、体の圧力を分散させます。
体圧分散以外に、必要な機能
低反発マットレスは、体が寝具に密着することにより、体圧分散をしますので、密着面の熱、温度、湿度、さらには、寝返りのしやすい機能が必要になります。
- マットレスの通気性
- 密着面の温度の上昇対策
- 気温の変化によるマットレスの、硬さの変化の対策
- 寝姿勢を正しくする、素材のサポート力
の、機能が、どの程度、どのようにあるかをチェックして、選ぶようにしましょう。
高反発マットレス
体圧分散のしくみ
高反発マットレスは、ファイバーを圧縮して作られています。具体的には、釣り糸のような特殊繊維が絡まるようにしながら、マットレスの長方形に圧縮されています。
高反発マットレスの、体圧分散のしくみは、繊維の細かな点が、体との接することで、圧力が、分散されます。
体圧分散以外に、必要な機能
高反発マットレスは、硬めのマットレスのため、体の沈み込みが少なく、圧迫される傾向にあります。そのため、血流やリンパの流れの滞りを解消するために、寝返りが必要になります。
- 寝返りが打ちやすい機能
体圧分散がされるとはいえ、マットレスが硬いので、寝返りの打ちやすさは、快眠のためには、必要な機能になります。高反発マットレスを選ぶ際は、どの程度の体圧分散性があるのか、と、寝返りが、どのように打ちやすくなっているのかを、確認して、選ぶようにしましょう。
凹凸形状のマットレス
体圧分散のしくみ
マットレスの表面が、ぼこぼことして、凹凸形状になったマットレスの、体圧分散機能は、連続したたまごのような形状が、圧力をマットレス全体に分散させることで、実現しています。
これは、物理のパスカルの原理を利用しているといっていいでしょう。
「密閉容器中の流体は、その容器の形に関係なく、ある一点に受けた単位面積当りの圧力をそのままの強さで、流体の他のすべての部分に伝える。」
引用:パスカルの原理、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
球体を並べることで、一点に圧力がかかっても、それぞれの球体に接する面を通じて、同じ大きさの力が発生し伝わる、というしくみです。
凹凸マットレスは、体が、マットレスの表面に密着せずに、凹凸の凸の部分に接することで、体の圧力を、均等に分散させています。
体圧分散以外に、必要な機能
凹凸マットレスは、マットレスの表面が凹凸になって、体圧を分散させますので、凸部分に、負担がかかります。
- 凸部分の耐久性
- マットレスの耐久性
- 体重がかかっても、凸部分がなくならない、マットレスの固さ
凹凸形状のマットレスは、体圧分散をしながら、寝姿勢を正しくキープする性能には優れています。ただ、使われている素材によっては、凸部分が、すぐに崩れる、体重がかかると、凸部分がやわらかすぎて、平面になってしまう、などといったマットレスも販売されているようです。
凹凸形状の健康マットレスをお選びの際は、使われている素材の固さや、耐久性をチェックするようにしましょう。
以上、
敷き寝具やマットレスの、体圧分散の機能とは、と、マットレスの構造の違いによる、体圧分散機能以外に必要な機能を、お伝えしました。
快眠寝具に大切なことは、体圧を分散させ、正しい寝姿勢で眠れて、快適な湿度と温度を維持しながら、健康的で質の高い睡眠ができる寝具であるということです。お好みに合った形状や構造のマットレスの機能を、きちんと吟味して、快眠をお楽しみくださいませ。
ご参考になれば幸いでございます。寝具の疑問、ご不明な点は、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。今晩も、どうぞぐっすりとお休みいただけますように。
この記事を書いた人
シーツjp店長。上級睡眠健康指導士(認定登録番号 第662号)。
専門分野の、快眠のための寝具の販売、及び、ご相談、ホームファニシング、インテリア販売に、1994年から従事。1923年創業の弊社の店舗にて、対面で23年間、お客さまにぐっすり眠れるための寝具のコンサルティング、ご提案、販売を担当。その経験を活かし、現在は、オンラインにて気持ちよく眠っていただくための、ベッド用寝具の販売、ご提案、ご相談に注力。
前職は、米国の航空会社のマーケティング部アジア統括スーパーバイザー。お客さまが快適で安全な空の旅を楽しんでいただくための仕事に従事。
たずさわるすべての方々とそのご家族が、ぐっすりと気持ち良く眠り、心地良く目覚め、活力いっぱいに、毎日をお幸せにお過ごしいただけるよう、仕事をしています。
ぐっすり気持ちよく眠るための寝具のご相談は、お気軽にお寄せください。