「たっぷり寝ているけど、眠りが浅い気がする」、「夜、なんだか目がさめてしまう」、など、眠りが浅いことを、気にされる方は少なくないようです。浅い眠りにも、役割があります。ここでは、浅い眠りの、大切な役割を、一つ、お伝えします。役割を知ることで、必要以上に、眠りの浅いことに、神経質にならず、リラックスして、眠りについていただければ幸いです。
目次
深い眠りと浅い眠りは、どのぐらいの時間あるの?
「眠りが浅いので、深い睡眠で、ぐっすり眠りたい」との声を頂戴します。深い眠りを、たっぷり、堪能したいですよね。
しかし、私たちは、一晩中、深い眠りで、眠り続けることはできません。
余波睡眠とよばれる、深い眠りは、成人の場合、一晩の眠りの中で、20%程度とされています(宮崎、佐藤、2013)。
その深い眠り、余波睡眠は、眠り始めてから、2~3時間の間に集中し、それ以降は、発生しないといわれています(堀、2000)。
仮に、7時間睡眠する場合、深い睡眠の余波睡眠は、眠り始めてから1時間半程度の間に、40分程度、そのあとの1時間半程度の間に、40分程度です。その後、目覚めるまでの4時間は、深い睡眠の余波睡眠は、発生しません。
残りの時間は、浅い眠りの状態になります。
一晩の眠りの中で、浅い眠りは、80%もあるのです。
7時間睡眠の方は、目覚める前の、4時間は、浅い眠りの状態ということになります。眠りの後半は、浅い眠りの状態が、正常なのです。
それを知ると、”眠りが浅い” という言葉や感覚に、必要以上に、敏感になっている気がしませんか?
浅い睡眠にも、大切な役割があります。その一つを、次にお伝えします。
睡眠の見張り番
浅い睡眠がある理由は、いくつかあるとされています。その中で、面白い理由があるので、お伝えします。
睡眠の見張り番、の役割です。
人は、眠っている間、無防備になります。無防備状態の睡眠中、脳は、危険がせまっていないか、見張りをしてくれいている、というのです。
医学博士の堀忠雄氏は、著書の中で、睡眠の見張り番という役割を、次のように紹介しています。
睡眠中も脳は環境をしっかり監視しており、わずかな変化でも危険を察知したら、ただちに睡眠を中断して覚醒する。起きるほどのことではないと脳が判断すれば、少々の物音とていどでは目をさますことはない。このような見張り番メカニズムは一晩中はたらいている。
(堀、2000)
著書内では、睡眠中に、音、光、電気ショックなどの刺激を与えて、睡眠している人の、反応具合を実験した結果を、紹介しています。
外からの刺激に対する反応は、睡眠が深くなるほど、鈍くなるとしています。最も深い眠りの余波睡眠では、外部の刺激には、反応がほとんどできなくなってしまうというのです。
睡眠の見張り番からすれば、一晩のうちで、余波睡眠中は、仕事がおろそかになってしまいます。睡眠の安全管理が、途切れてしまうということです。
前の項目で、深い眠りは、眠り始めて、3時間の間に、2度に分けて発生すると、お伝えしました。
安全管理の面からみると、眠り始めてすぐと、眠ってから数時間後を比べると、眠り始めのほうが、安全性が高いような気がします。眠る前に、周りの安全性を確認してから眠れるからです。
その視点からすると、深い眠りが、眠り始めに集中し、さらに、深い眠りは継続せず、途中で、浅い眠りで分断される理由が、わかるような気がしませんか?
深い眠りのために、睡眠の見張り番が活躍しています。睡眠の見張り番がしっかり仕事ができるように、睡眠が深くなったり、浅くなったりの波がある、ということにもなるような気がします。
堀氏の言葉をお伝えします。
ぐっすり眠るために、しっかりした見張り番を立てる。むだにおきたりしないように眠らずに環境情報を処理し、起きるかそのまま眠りつづけるかを判断する。わたしたちの脳はつねに矛盾した二つの作業におりあいをつけ、なんとかどちらの希望も受け入れるところで、気持ちのいい眠りを実現しているのである。
(堀,2000)
いかがでしょう。
深い睡眠と浅い睡眠、それぞれの時間と、浅い睡眠の役割を知ると、少し気が楽になりませんか?
眠りは、気持ちを楽にして、リラックスすると、眠りに入りやすいとされています。この記事で、少しでも、浅い眠りの不安が減って、リラックスした状態で、楽に眠っていただけるようになれば幸いです。
脚注
文献
堀忠雄、(2000)『快適睡眠のすすめ』岩波新書.
宮崎総一郎, 佐藤尚武、(2013) 『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』株式会社全日本病院出版会.
ご参考になれば幸いでございます。寝具の疑問、ご不明な点は、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。今晩も、どうぞぐっすりとお休みいただけますように。
この記事を書いた人
シーツjp店長。上級睡眠健康指導士(認定登録番号 第662号)。
専門分野の、快眠のための寝具の販売、及び、ご相談、ホームファニシング、インテリア販売に、1994年から従事。1923年創業の弊社の店舗にて、対面で23年間、お客さまにぐっすり眠れるための寝具のコンサルティング、ご提案、販売を担当。その経験を活かし、現在は、オンラインにて気持ちよく眠っていただくための、ベッド用寝具の販売、ご提案、ご相談に注力。
前職は、米国の航空会社のマーケティング部アジア統括スーパーバイザー。お客さまが快適で安全な空の旅を楽しんでいただくための仕事に従事。
たずさわるすべての方々とそのご家族が、ぐっすりと気持ち良く眠り、心地良く目覚め、活力いっぱいに、毎日をお幸せにお過ごしいただけるよう、仕事をしています。
ぐっすり気持ちよく眠るための寝具のご相談は、お気軽にお寄せください。