公開日:2019.12.11

お酒を飲むと早く眠れる? 寝酒をしても良いの? 飲酒と睡眠の関係

お酒を飲むと早く眠れる? 寝酒をしても良いの? 飲酒と睡眠の関係

お酒を飲むと早く眠れる? 寝酒をしても良いの? 飲酒と睡眠の関係

「お酒を飲むと眠くなってしまう」、「お酒を飲むとすぐに眠れる」など、お酒と眠気についてのお声をお聞きします。眠りにつくために、寝酒をしている方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、飲酒と眠気の関係、と、寝酒の是非をお伝えします。質の良い睡眠で健康でいるためのヒントにしていただければ幸いです。

目次

お酒を飲むと、早く眠れる? 飲酒と眠気の関係

「お酒を飲むと、なんだか眠くなる」「お酒を飲むと、すっと眠れる」など、感じたことがある方は多いかもしれません。ここでは、飲酒と眠気の関係を、お伝えします。

結論からお伝えすると、飲酒することで、眠気は強まるとされています。アルコールの中枢神経抑制作用というはたらきによって、眠りを誘うのです(宮崎、佐藤, 2013)。

事実を知るために、専門家の声をいくつかみていきましょう。

まず、神経科学の専門家で、医学博士の池田和隆氏の文献を紹介します。池田氏は、アルコールと催眠作用について、アルコールは睡眠誘導作用があるとした上で、次のように記しています(池田、小林、曽良,2002)。

エタノールでは催眠作用があるので、アルコールを投与したマウスを仰向けに寝かせると数十分間そのままの姿勢をとる。

(池田、小林、曽良,2002)

エタノールは、アルコールに含まれる成分です。上記は、アルコール摂取、飲酒によって、眠気が促される作用がある、と、調査結果による事実を伝えています。

次に、睡眠学の専門家で、医学博士の宮崎総一郎氏の、アルコールと睡眠についての文章を紹介します。宮崎氏は、著書の中で、次のように記しています。

アルコールには、中枢神経抑制作用があり、鎮静・睡眠作用をもたらす。
中略。
一般に適量のアルコールは入眠を早め、深い睡眠を増加させる。

(宮崎、林,2017)

上記は、アルコールの薬理作用で、リラックスや睡眠を促すと伝えています。さらに、宮崎氏は、飲酒によって、眠りにつきやすくなる、とも知らせてくれているのです(宮崎、林,2017)。

私たちが「お酒を飲むと、なんだか眠くなる」「お酒を飲むと、すっと眠れる」と感じていたことは、科学的に事実であると捉えていいのでしょう。

だとすると、

  • 「眠れないときは、お酒を飲めばいいの?」
  • 「寝酒をすればいいのね?」

と思われる方もいらっしゃるでしょう。

この点が、今回一番お伝えしたい点です。次の項目で詳しくお伝えしていきます。

早く眠れるなら、寝酒は良いの? 寝酒の是非

「飲酒で早く眠れるなら、寝酒は良いの?」

結論からお伝えします。飲酒で睡眠は誘発されますが、寝酒はおすすめしません。

睡眠学、臨床心理学の専門家で医学博士の堀忠雄氏は、著書の中で、はっきりと次のように記しています。

アルコールを飲むと眠りにつきやすいという人がいる。しかし、入眠のためにアルコールを使うのはよくない。

(堀, 2000)

堀氏は、アルコールが、鎮静作用と睡眠作用があることを認めた上で、飲酒の導眠剤的な使い方は避けるように伝えているのです。

堀氏のみではなく、睡眠学の専門家の方々も、そろって、寝酒は避けるように伝えています。

その理由を、アルコールと睡眠の関係性の、次の二つの側面から説明しています。

  • アルコールが睡眠に与える作用
  • アルコール耐性が上がることでの弊害

ひとつずつ解説していきます。

寝酒をおすすめしない理由1.アルコールが睡眠に与える作用

寝酒をおすすめしない理由として、伝えられているのが、アルコールの睡眠への作用です。

最初にお伝えした通り、飲酒は、入眠を促します。しかし、その後の、作用が問題となるのです。アルコールが睡眠に影響を及ぼす様子を、箇条書きにしてお伝えします。

アルコールが睡眠に作用する点

  1. 眠る前の適量のアルコールは入眠を早め、寝つきを良くする
  2. 一定時間の経過で、アルコールによる代謝と排泄が素早く行われる
  3. 利尿作用によって目が覚める
  4. アルコールの血中濃度が低下する
  5. アルコールの血中濃度が低下し、その濃度の影響で、覚醒効果が作用する
  6. 覚醒効果が作用すると、眠りが浅くなる、目が覚めやすくなる、レム睡眠が増加する
  7. 眠りの後半で目が覚めてしまうと、睡眠周期のタイミングがずれ、再入眠が難しくなる
  8. 睡眠後半の眠りの質が悪くなる

(宮崎、林, 2017)

寝酒をすると、寝つきは良くなります。ただ、眠りに入った後、途中で目が覚めやすくなったり、眠りが浅くなったりし、睡眠の質の低くなってしまうのです。

お酒を飲むことを否定しているのでは全くありません。お酒を飲む夜ももちろんあるでしょう。ここでお伝えしたいのは、ぐっすりと眠る目的で、寝酒をすることは、結果的に、睡眠の質の低下につながる、とお伝えしたいのです。

寝酒をおすすめしない理由2.アルコール耐性が上がることでの弊害

寝酒をおすすめしない理由のもう一つが、アルコールの耐性が上がることでの、睡眠に対する弊害です。弊害とは、具体的には、アルコールの依存と睡眠障害です(堀,2000)。

アルコールの耐性が上がることの弊害の流れを、箇条書きでお伝えします。

アルコールの耐性が上がることの弊害の流れ

  1. ぐっすり眠るために、寝酒をする
  2. 寝酒を繰り返す
  3. アルコール耐性が上がる
  4. アルコール耐性が上がると、アルコールによる催眠作用が低下する
  5. 寝酒しているのに、眠れなくなる、不眠になる
  6. 不眠を解消するために、酒量が増える
  7. アルコールに対して依存性が促進されやすくなる
  8. アルコールの依存性が高まると、睡眠の質の低下、睡眠障害を招きやすい
  9. 睡眠の質の低下、不眠につながりやすい

(宮崎、林, 2017)

良く眠りたい気持から、寝酒を習慣にすると、飲酒を繰り返すことで、アルコール、寝酒の効き目がなくなっていくのです。寝酒の効き目がない、とわかった時点で、寝酒をやめれば、上記の悪循環を止められます。寝酒の効き目が薄れていくに従い、酒量を増やし、寝酒を続けると、上記のような悪循環を招いてしまうのです。

先出の、睡眠学の専門家であり医学博士の堀氏は、アルコール耐性の上昇による、睡眠への弊害を次のような言葉を使って伝えています。

アルコール耐性が上がり、酒量も増える。連日の大量アルコールで睡眠は歪められ、不眠が進行する。こうして比較的短期間に、アルコール依存症と不眠症ができあがる。

(堀,2000)

堀氏は、自身の著書の中で、上記を明言しているのです。引用文は明確で、補足の説明はいらないでしょう。

もうお一方、専門家の言葉をお伝えします。睡眠学が専門で、医学博士の宮崎総一郎氏の著書での言葉です。

アルコールは入眠を促進するが、睡眠後半では睡眠内容を悪化させ、結果として睡眠障害の原因となる。

(宮崎、林, 2017)

宮崎氏も、著書で、明確に、寝酒の習慣による弊害を伝えています。

繰り返しになりますが、この記事では、飲酒の是非を伝えているのではありません。ぐっすりと眠りたいという目的で、寝酒を習慣にすることの是非をお伝えしています。

ぐっすり眠りたい、という気持ちや目的が、期待とは逆の結果を招いていたら、とても残念であるということを、お伝えしたかったのです。

最後に、先出の堀氏が、夜のお酒の飲み方について、伝えている言葉を引用します。

気持ちをコントロールするための少量のアルコールはかまわないが、せめて寝る直前ではなくて、寝る一時間前までに切り上げるのが大切である。そうすれば、少なくともアルコール依存症にはならないですむ。

(堀, 2000)

毎日の心地よい睡眠、質の良い睡眠で、元気にお過ごしいただければ幸いです。

 
 
 

脚注

文献

堀忠雄、(2008)『睡眠心理学』株式会社北大路書房.

堀忠雄、白川修一郎、(2008)『基礎講座 睡眠改善学』一般財団法人日本睡眠改善協議会.

宮崎総一郎、林光緒、(2017) 『睡眠と健康』一般財団法人放送大学養育振興会.

宮崎総一郎, 佐藤尚武、(2013) 『医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック』株式会社全日本病院出版会.

池田 和隆, 小林 徹, 曽良 一郎,アルコールと脳機能,日本醸造協会誌,Vol97, No.2, PP.124-130, 2002.


ご参考になれば幸いでございます。寝具の疑問、ご不明な点は、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。今晩も、どうぞぐっすりとお休みいただけますように。

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