公開日:2019.06.05

夏に快適に眠るための、エアコンの設定温度とタイマーの使い方

夏に快適に眠るための、最適な室温とエアコンの使い方

「暑くて眠れない」「起きたら汗びっしょり」「夏は熟睡できずに辛い」という方も多いのではないでしょうか。寝室の暑さとジメジメした湿気は、睡眠の質を阻害します。ここでは、夏に質の良い睡眠で快眠するための、寝室の最適な温度と湿度、と、エアコンの使い方をお伝えします。ぐっすり眠って、夏を元気にお過ごしいただければ幸いです。

目次

夏の寝室の最適な温度と湿度設定は?

「夏の寝室のエアコン、何度に設定すれば、快眠できる?」

夏に快眠するためには、

  • 寝室の室温が、26℃
  • 湿度が、50%~60%

になるようにエアコンを設定するとよいとされています。

質の良い睡眠のためには、寝室のエアコンの設定温度を、26℃、湿度の設定も可能ならば、50%程度に設定しましょう。(設定温度の根拠は、次の項目でお伝えしていきます。)

夏の寝室のエアコンの設定温度

夏の寝室のエアコンの設定温度

 

エアコンの設定温度、には、注意点があります。

エアコンの性能によって、エアコンのスイッチの設定温度と、実際の部屋の温度に違いが生じる場合ある、という点です。

例えば、エアコンのスイッチの設定温度を、28℃にして、十分冷えるエアコンもあれば、スイッチの設定温度を、21℃にしても、なかなか冷えないエアコンもあります。

大切なのは、室温です。

室温が、26℃程度になるように、エアコンを使います。室温計を、寝室に置き、確認することをおすすめめします。お使いのエアコンの癖を把握して、スイッチの設定温度を調整してみましょう。

設定温度と湿度の根拠・解説

ここからは、夏の寝室の設定温度を26℃、湿度を50%~60%、とお伝えした、根拠をお伝えしていきます。

寝室の高温と多湿状況が、睡眠中の体温に与える影響を示した実験結果のグラフをご覧ください。

下記は、室温を、29℃と35℃、湿度を50%と75%に設定し、男性が上半身裸、下着一枚だけで眠った時の、体温の変化を表しているグラフです(宮崎、林、2017)。室温と湿度の組み合わせで、4パターンの結果が表示されています。
 

寝室の高温と多湿状況が、睡眠中の体温に与える影響(宮崎、林、2017)
(寝室の高温と多湿状況が、睡眠中の体温に与える影響(宮崎、林、2017))

グラフの1番上と2番目の線は、室温を35℃に設定した時の結果です。冷房を使用しない夏の寝室では、35℃になることも多々あります。その状況で眠ると、体温は、ほとんど下がりません。

ヒトは、体温が下がることで入眠していきます。体温がさならないと、入眠しにくく、寝つきが悪くなります。

グラフの上から3番目と4番目の線をご覧ください。室温を、6℃下げ、29℃に設定した結果です。体温が下がっていくのが見てとれます。体温が下がっていきますので、寝つきやすくなります。

室温を下げることで、入眠がしやすい状態となります。

ここで、湿度にも目を向けてみましょう。35℃の室温でも、湿度を75%から50%にすると、体温が低下し始めるのがわかります。これは、湿度を下げることで、汗の蒸発が促されるからです。

快適な睡眠環境には、室温だけでなく、湿度設定も大切であることがわかります。

この実験結果は、裸で眠った時の数値です。私たちは、心地よく眠るために、パジャマを着用し、掛け寝具を使います。29℃の寝室では、まだ、暑すぎます。パジャマを着て、寝具を使った際の、夏に快適に眠るための寝室の室温と湿度が、最初にお伝えした、数値、26℃と50%になるのです。

夏の寝室の最適温度と最適湿度を示している文献を、ご参考までに引用します。

夏のオフィスの空調を28度に設定するように提唱しているが、寝衣や寝具を身にまとうと、28℃でも暑くて睡眠を妨害してしまう。夏の夜は、それよりも2℃低い室温26℃、湿度50~60%であれば、睡眠が良好に保たれる。それよりも室温が高くなると、寝つきが悪くなり、途中で目がさめやすくなる。

(宮崎、林、2017)

ここまでは、エアコンの設定温度をお伝えしました。次からは、エアコンのタイマーの使い方をお伝えします。

エアコンのタイマーは、どう使うのが良い?

「エアコンは、タイマーセットして使った方が良いの?」
「エアコンのタイマーはどう設定するのが良いの?」

夏に快眠するために、ベストなエアコンの使い方は、

  1. 就寝の2~3時間前にエアコンをつけ始め、寝室の壁や家具の温度を下げる
  2. 睡眠の前半に使用し、タイマーセットをして、後半は使用しない

です。具体的に説明をしていきます。

1.就寝の2~3時間前にエアコンをつけ始める

寝室のエアコンは、就寝時にオンにするのではなく、就寝の2~3時間前から使用するようにします。寝室の壁や家具の温度をしっかりと下げるためです。夏は、日中、壁や天井、家具に熱がたまり、その熱が夜間も残り、室温を上げてしまうことがあります。

仮に、就寝時に、エアコンをつけ、タイマーを1時間で止まるように設定するとしましょう。1時間では、寝室の空気は冷えても、寝室の壁や家具が冷えません。エアコンが停止した後、壁や家具の熱で、寝室の室温が、再び上昇してしまいます。眠りに入ろうとした段階で、室温が上がりますので、覚醒してしまい、眠りの妨げになります(宮崎、林、2017)。

上記のことから、エアコンは、就寝の2~3時間前からつけておくことをおすすめします。

2.エアコンを睡眠の前半に使用し、タイマーセットをして、後半は使用しない

寝室のエアコンは、睡眠の前半だけ使用するようにします。睡眠の後半、具体的には、起床の4時間程度前には、冷房は、切れた状態にしておきます。理由は、最初にお伝えした、体温と睡眠の関係によります。

ヒトは、体温の低下と共に入眠し、体温が一番低くなった後、体温の上昇と共に、目覚めます。

睡眠の後半、目覚めの準備の段階に入った時に、冷房が付いていると、体温の上昇を妨げ、すっきりとした目覚めを妨げてしまいます(宮崎、林、2017)。目覚めても、強い眠気が残る、睡眠惰性の原因にもなってしまいます。

タイマーが切れる時間設定は、睡眠の前半であれば、お好みで調節するのが良いでしょう。好みがわからない場合、就寝前に、寝室を十分冷やした後、就寝時、1~2時間でエアコンが切れるように設定してみましょう。夜中、暑さで目覚めなければ、その時間が、あなたに適切なタイマー設定になります。ご自身で、様子を見ながら設定してみることをおすすめします。

エアコンを、睡眠の後半だけ使用し、前半は付けない、パターンはおすすめしません

エアコンを、睡眠の後半、目覚めに合わせて、使ってみるのはどう? と思われる方もいらっしゃるでしょう。冷房のエアコンを、睡眠の後半だけ使うことは、おすすめしません。理由は、

  1. 睡眠の前半に寝室が暑いままになってしまう
  2. 寝室が暑いままだと、入眠するための体温の低下がしにくくなる
  3. 体温を低くできないと、発汗することで、体温を下げようとする
  4. 睡眠中の汗は、不快感となり、睡眠の質を妨げる
  5. 睡眠の前半にかいた汗が、パジャマやシーツ、カバーを湿らせ、後半に冷房を使うことで、湿気が冷えて、体を冷やしてしまう
  6. 睡眠の後半は、体温の上昇をして、目覚めをする時間帯であるが、冷房を使うことで、体温の上昇を妨げてしまう
  7. 睡眠の後半で、体温が上がらないと、目覚めの悪さの原因となってしまう

などがあげられます。

睡眠の質を高めるためには、夏の寝室のエアコンは、睡眠の前半に使い、後半には、使用しないことが大切です。夏の睡眠時に、冷房、エアコンを使う際は、タイマーセットで、後半には、切れるようにするようにしましょう。

夏、熟睡ができない理由

最後に、夏に熟睡できない、根本的な理由をお伝えします。根本的な理由をお伝えすることで、ここまでお伝えしてきた、夏の寝室の最適温度と湿度、と、エアコンの最適な使い方を、すんなりと受け入れていただきやすくなるからです。

夏、熟睡ができない理由は、寝室が暑すぎるから、ではあるのですが、その根本的な理由は、睡眠と体温調節の関係性にあります。

睡眠と体温調節の関係性は、次のとおりです。

ヒトの睡眠は、体温の低下に伴い、眠りに入り、体温の上昇に伴い、目を覚ますしくみになっています。体温が下がらないと、寝つきが悪く、睡眠が浅くなりがちになります。

ここで、もう、おわかりの方も多くいらっしゃるでしょう。夏に熟睡できない原因の一つは、就寝時、体温がなかなか下がらないからなのです。

体温の低下と睡眠について、医学博士で睡眠の専門家の著書を引用しながら、もう少し詳しく説明します。

正常な夜間の睡眠では、就寝する前から皮膚温、特に足背、手背などの抹消の皮膚温が顕著に上昇し、放熱が行われるために深部体温は低下する。入眠すると、深部体温は低下した後、起床に向けて上昇する。入眠前と入眠後に体温が円滑に低下することが、睡眠には重要であることがわかっている。

(堀、白川、2008)

上記は、体温の低下は、皮膚の温度を上昇させて、放熱をさせることで行われる、と伝えています。ここでのポイントは、皮膚の温度が、上がっていく、という点です。もともと温度が高ければいいのではなく、低い温度が高くなることが、必要なのです。

夏の皮膚の温度を想像してみてください。高そうですよね。実際に、ヒトの皮膚温と季節変動の関係性についての実験結果を示した論文では、

温暖期(6月ー10月、外気温15℃以上)には皮膚温は外気温に追随して変化する

(岡村、中村、1997)

としています。夏は、皮膚の温度が、就寝前から高いのです。すでに高くなっている皮膚の温度は、上昇がしづらく、結果、体温も下がりにくくなります。体温が下がらないと、入眠、つまり寝つきが悪くなるという流れになるのです。

さらに、この続きがあります。皮膚温が上がらず、放熱ができないと、ヒトは、汗をかくことで、放熱して、入眠をしようとします。放熱がされて、眠りにつきますが、今度は、汗の湿気による不快感が、深い睡眠の妨げになっていくのです。汗の不快感が眠りの妨げになるのは、多くの方が、体感されてご承知のとおりです。

これが、夏の熟睡を妨げる、原因になっているのです。

以上、
夏に、快適に眠るための寝室の室温設定と、エアコンの使い方をお伝えしました。冷房のエアコンの使用は、お好みも分かれることでしょう。ただ、室温の高さは、眠りの妨げになることは確かです。寝室が、29℃以上になる日は、エアコンを使用し、適切な寝具も使いながら、質の良い睡眠を取れるようにしましょう。ぐっすりと眠ることで、夏を元気に過ごしていただければ幸いです。

設定温度に関するお断り

寝室の適切な設定温度について、お断りです。寝室の適切設定温度は、28℃が最適と示している文献もあります(川島、垣鍔、2007)。この記事では、次の理由から、28℃とは記さず、26℃とお伝えしました。その理由は、その論文で示されていた、実験が

  • 寝室の設定温度を、28℃、一定値に設定して行われ、それ以下の室温では、実験が行われなかったこと
  • 着用した寝間着が、半そでと短パンであったこと

からです。筆者の判断で、この記事では、その論文の数値を用いず、最適な設定温度を26℃とお伝えすることにしました。ここでお断りをしておきます。
 

脚注

文献

堀忠雄、白川修一郎、(2008)『基礎講座 睡眠改善学』一般財団法人日本睡眠改善協議会.

宮崎総一郎、林光緒、(2017) 『睡眠と健康』一般財団法人放送大学養育振興会.

岡村圭子、中村泰人、同一熱環境実験に基づく皮膚温および体温の年内変動、日生気誌 34(2), 89-95, 1997.

川島康、垣鍔直、下記の睡眠時における最適な冷房条件に関する実験的研究、人間と生活環境、11(1),31-37, 2004.


ご参考になれば幸いでございます。寝具の疑問、ご不明な点は、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。今晩も、どうぞぐっすりとお休みいただけますように。

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